
とちぎには、地域の暮らしの中で育まれてきた「地元の味」があります。家庭の食卓でおなじみの料理から、地元の人だけが知る名物まで。長く愛されてきたその味には、土地の風土や人々の思いが息づいています。今回は、県内各地のソウルフードをめぐり、とちぎの食文化の魅力をご紹介します。旅の途中に立ち寄りたくなる、とちぎならではの味を見つけてみませんか?

那須塩原市塩原地区の名物「スープ入り焼きそば」は、独特な名前が印象的なご当地グルメです。
ソースで香ばしく炒めた中華麺に、醤油ベースのあっさりとしたスープを注いだ一品で、具材は豚肉、キャベツ、もやしなど。シンプルながら、どこか懐かしい味わいが魅力です。
発祥には諸説があり、「昭和30年代に焼きそばとスープを同時に出前していた際、スープがこぼれたのをきっかけに、焼きそばにスープを注いで提供した」という説のほか、「かつて存在した食堂の裏メニューとして生まれたスープ入り焼きそばを受け継いだ」という説も伝えられています。
寒暖差のある那須塩原の気候にぴったりの温かい料理として親しまれ、地元では家族連れや観光客が昼食やドライブの途中に味わう定番メニューとなっています。
湯気の立つ丼を前に、心も体もほっと温まる那須塩原のソウルフードです。

「宇都宮焼きそば」は、もちもちとした太麺に自分でソースをあとがけし、好みの味に調整できるのが特徴です。
ソースはウスターソースをベースにしたものから、店ごとのオリジナルブレンドまでさまざまで、どれも麺によく絡みます✨
さらに、麺を出汁スープで一度蒸し焼きにするのもポイント。こうすることで、しっかりと味が染み込み、ついもう一口食べたくなるおいしさに仕上がります!
具材にはキャベツやイカのほか、肉やハム、目玉焼きをトッピングすることもあり、食欲や気分に合わせて焼きそばの量や具材を自由にカスタマイズできるのも魅力です。
昭和27年創業の地元の焼きそば店が元祖とされ、当時は子どものおやつとして提供されていました。
濃厚ながらも飽きのこない味わいで、目玉焼きや揚げ玉をのせて自分流にアレンジするのも楽しみのひとつ。
お祭りやイベント、休日の昼ごはんなど、地元の人々の暮らしに根づいた、懐かしくも奥深い一皿です。
〒321-0945 栃木県宇都宮市宿郷5丁目27-11
028-633-1084
営業時間:11:30-20:00、日曜日~15:00
定休日:木曜日

「かぬまシウマイ」は、鹿沼市が展開している比較的新しいご当地グルメです。もともと、横浜の名物駅弁やお土産として知られる「崎陽軒のシウマイ」の初代社長・野並茂吉氏が鹿沼市の出身だった縁から、「シウマイ」が鹿沼のまちおこしに生かされるようになりました。この取り組みが本格的に始まったのは2020年のコロナ禍。地元の商工会議所を中心に、地域経済の活性化を目的としてプロジェクトがスタートしました。
特徴として、各店舗がそれぞれ異なるサイズ・具材・味付けのシウマイを提供しており、「蒸し」「揚げ」「スイーツ」など、スタイルも多彩です。市内のさまざまな店舗で、個性豊かなオリジナルシウマイを楽しむことができます。
現在では、鹿沼市内の70軒以上の店舗が独自の「かぬまシウマイ」を提供しており、まちおこしの一環として崎陽軒公認「シウマイ像」が設置され、店舗マップの配布なども行われています。
〒322-0056 栃木県鹿沼市下材木町1361
0289-62-2267
営業時間:11:00 – ※売り切れ次第終了
定休日:月曜日

益子町の田町地区で、夏になると食卓に並ぶ定番料理「ビルマ汁」。そのルーツは、1945年、太平洋戦争の終戦の年までさかのぼります。
当時、「もおかや」の先代・飯塚潤一さんが、戦地ビルマ(現ミャンマー)で出会ったスープの味を忘れられず、帰国後に日本で手に入る食材で再現したのが始まりでした。
やがてその味はご近所にも伝わり、田町地区の家庭料理として親しまれるように。
今では、益子の夏の風物詩として多くの人に愛されています。
赤く熟したトマトをはじめ、ナスやインゲン、ジャガイモ、ニンジンなどの夏野菜をぶつ切りにして、和風だしでコトコト煮込みます。
唐辛子の辛みとカレー粉の香りが食欲をそそり、出汁のうま味がきいたスープは、汗をかきながらでもついもう一口すすりたくなる味わい。
町内の飲食店では、6月ごろから夏季限定メニューとして提供されており、地元の人はもちろん、訪れる人にとっても“益子の夏を感じる一杯”として人気です。
〒321-4217 栃木県芳賀郡益子町益子2666-1
0285-72-3360
営業時間:【月曜~水曜】11:00-14:00
【金曜~日曜】11:00-14:00/17:00-20:00
定休日:木曜日
※ビルマ汁は夏期限定商品となります。

県南・佐野市発祥のソウルフード。
蒸したジャガイモを串に刺し、衣をつけて揚げたあと、特製ソースをかけて仕上げます。
甘みとホクホク感のあるジャガイモに、コクのあるソースがよく合い、おやつや夕食のおかずに親しまれています。
1本150~200円程度で楽しめる庶民の味で、軽食や学校帰りに買い食いする“思い出の味”としても定番。
気取らず懐かしく、地元のぬくもりを感じる栃⽊県ならではの⼀串です。
今もなお、学校帰りの定番おやつとして世代を超えて愛されています。
〒327-0821 栃木県佐野市高萩町561-10
0283-23-7007
営業時間:10:00-16:00
定休日:日曜日・水曜日

ホクホクのじゃがいもがアクセントになった、足利市ならではの焼きそば。
大正時代初期、栃木県南部ではじゃがいもが身近な食材で、子どもたちのおやつとして「長ネギとじゃがいもの醤油炒め」が親しまれていました。
その後、地元のソース会社が醤油の代わりにソースを使ってみたところ、これが大好評。ソース味が広まり、戦後には焼きそばにじゃがいもを加えた「ポテト入り焼きそば」が誕生しました。
もちもちの麺にホクホクとしたじゃがいもが加わり、ソースの香ばしさと見事にマッチ。
現在では足利市内に20軒以上の専門店があり、それぞれの店がオリジナルの味を競っています。
地元の人にとっては懐かしの味であり、観光客にも人気のご当地グルメです。
〒326-0824 栃木県足利市八幡町2丁目12-9
090-4004-0876
営業時間:10:30~15:30頃(売り切れ終了)
定休日:月曜日(祝日の場合は営業し翌日休み)
悪天候時は休み(雨・強風など)