2024.2.22
10万人の大歓声に突き動かされ
今、栃木で馬に触れる
杉山 史(すぎやま ふみ)さん
栃木県出身|栃木県在住
県外大学(農学部 獣医学専修)に進学後、JRAに入会
JRA競走馬総合研究所
運動科学研究室
2024.2.22
杉山 史(すぎやま ふみ)さん
栃木県出身|栃木県在住
県外大学(農学部 獣医学専修)に進学後、JRAに入会
JRA競走馬総合研究所
運動科学研究室
子どもの頃から動物が大好きだった杉山さんは、大学を卒業し獣医師の免許を取得。犬や猫などの小動物も好きだったけれど、選んだ仕事は「馬に触れること」でした。何をきっかけに競馬の世界へ?久しぶりの栃木暮らしは?など、一度栃木を離れたからこそわかる栃木の良さなどを含め、お話を伺いました。
―現在の仕事内容を教えていただけますか?
日本中央競馬会(JRA)に入会し、最初の4年は滋賀県栗東市にあるトレーニングセンターで馬たちの臨床獣医をしていました。5年目にここ栃木県下野市の競走馬総合研究所に異動になり、今は運動科学研究室で競走馬の運動解析などをしています。
ありとあらゆるデータを解析して競走馬が速く走ることができる仕組みを探り、科学的に裏付けられたトレーニング方法、怪我や熱中症を起こす要因や予防法などについて、現場にアドバイスを行っています。
また、土日は実際の競馬開催の現場に出向いて、競走馬の怪我などに備える役割を果たす時もあります。
―そのような仕事のなかで、喜びを感じる瞬間ややりがいを感じるはどのような時ですか?
「馬の運動解析」と一口に言っても、実際に馬に装置を付けてあらゆる運動データを取ったり、その膨大なデータをパソコンで何ヶ月も解析したりと、とても長くハードなものです。でも、そのデータを学会などで発表して評価していただいたり、厩舎の現場の方が活かしてくれて感謝の言葉をもらったりすると、頑張って良かったなとうれしく思います。日本で競走馬の研究をここまでできるのは私達だけなので、責任と自負の心をもって、取り組んでいます。
―JRA競走馬総合研究所に就職された経緯は?
子どもの頃から動物が大好きで、よく牧場や那須どうぶつ王国などに連れて行ってもらっていました。獣医師免許を取るために大学で学び、いざ獣医師としてどこで働くかと考えたとき、牛や馬の大動物に関わりたいなと思ったんです。牛、馬…と大動物に関する仕事を模索していたときに、競馬場に競馬を見に行く機会がありました。そこで出会ったのが、あの、ゴール前数秒間に沸き起こる10万人の大歓声!!地響きが起こるようなあの歓声とエネルギーにもうゾクゾクしてしまって、「この世界で馬に関わりたい!」と思いました。
私はJRAの研究所がある栃木県の出身ということもあり、中学生の時にはこの施設の存在を知っていたんです。ですが、この施設が栃木にあるから、というのが就職を希望したきっかけだったわけではなく、「競馬というエンターテインメントの世界で馬と関わりたい」と思ってエントリーし、採用していただくことができました。
―栃木での勤務を希望されてこちらに異動になったのですか?
JRAという組織は当然ですが日本で一つしかなく、全国採用でした。競走馬のトレーニングセンターは国内に2か所あり、研究所等の関連事業所も国内各所にあります。JRAに入会後、私は滋賀県の栗東市にあるトレーニングセンターで臨床獣医師として従事していましたが、ここ栃木県の研究所に異動となったのは実は特に自分で希望したわけではありません(笑)。でも、こうして地元に戻ってきて、栃木県で暮らし、働いて、改めて栃木の良さを再認識しているところです。
―休日はどのように過ごされていますか?また、栃木の魅力はどのようなところだと思いますか?
近くの温泉施設でのんびりしたり、グランピング施設へ行ったりしています。それから道の駅巡りも好き。珍しい野菜を見るとつい買ってしまうし、地元の野菜は安くておいしくて最高です。栃木は自然が豊かで、四季の風景を楽しめるのが良いですよね。ちょっと高いところに登れば筑波山や日光連山が見渡せて本当に気持ちが良いと思います。
また、友人に会いに東京に行ったり、同期に会いに全国各所に遊びに行ったりすることもあります。東北新幹線が通っている栃木県は、東京へのアクセスも良いし本当に便利!仕事での出張も含め、フットワーク軽く移動しています。
―これから会社でどのような仕事をしていきたいですか?
約2年前に栃木に異動してからは、挑戦の連続です。部署の歴史が長く、残されている業績も大きいので、まずはそれを学ぶことから始めました。私はまだここでの仕事は2年目ですが、研究をもっと深めていって、足跡を残せるように頑張っていきたいです。
―JRAが求めている人物像はどのようなものだと思いますか?
私たちは「競馬」に関わる組織なので、まずはそれを公正に執り行わなくてはならないという基本があります。そのため、守らなくてはならないルールがたくさんあり、信用を失うようなミスは許されないシビアな面があると思います。一方では「エンターテインメント」というサービス業である一面も。また私たちの研究は「競走馬の福祉の向上」につながる活動として行われています。このように多様な面がある仕事なので、あらゆる面で臨機応変に対応できることはやはり必要になってくると思います。それから、お客さまと馬のために頑張れる人!根本的なことですが、結局はそこに尽きるかなと思います。
―最後に就活生へのメッセージをお願いします
私は「日本で馬に関わりたいならここがトップだ!ここしかない!」と思い、ここに就職しました。やはりあの約10万人が一斉に沸き立つ瞬間の感動は、他では味わえないものだと思います。ぜひ一緒に競馬というエンターテインメントを盛り上げていきましょう。
「馬に触れている時が一番幸せです」と話してくださったとおり、馬に接している時の杉山さんはとても柔らかな表情をされていました。研究職という立場でも、臨床獣医という立場でも、競走馬がその一生を健康に走り抜けられるように自分の力を注ぐことが、杉山さんのライフワークのようです。馬愛の深い獣医師として、競馬というエンターテインメントに貢献していく姿が楽しみです。
Profile
杉山 史(すぎやま ふみ)さん/30代
栃木県出身|栃木県在住
JRA競走馬総合研究所
運動科学研究室