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いちごに寄り添った栽培法を追求し“いちご王国”を支える

栃木県は言わずと知れたいちごの名産地。福岡県や熊本県、静岡県など、各地でもいちごの生産や新品種開発に力を入れるなか、生産量、出荷量とも王座を守り続けています。
「栃木県は日照量の多さと、冷涼さをもち合わせた気候です。涼しさでいちごがゆっくり成熟するから、じっくり甘くなるんです」と話すのは、江俣伸一さん。いちご生産歴約40年のベテランで、自他ともに認める研究熱心な生産者です。近年注目を集めている品種「スカイベリー」については、試験栽培の段階から携わって栽培のノウハウをつくり出し、とちぎブランドの旗揚げに一役かいました。
いちごづくりでモットーとしていることは、欲を出さないこと。「力みすぎると、良いものはできなくなります。常にいちごをよく見て感じをつかみ、細かく対応することに集中するようにしています」。特に神経を使っているのは温度管理です。「うちの温度管理はきめ細かいんですよ~。先の先の天気まで読んで、対策を立てています」。温度管理は果実のおいしさの肝でもあり、充実した株を保つ基本。ハウス内の気温は常に25度を保ち、サーキュレーターを使って温度にばらつきがでないように徹底管理。機械だけに頼らず、品種による性質や天候などを総合的に見ながら細かく対応し、たくさん実がなる元気な株を維持します。いちごの栽培は1年に1作のみで、失敗しても植え直しはききません。一期一会の真剣勝負です。
ハウスの環境や栽培のデータはクラウドサービスで公開し、県内の生産者に情報提供しています。「とちぎはほかの県に先駆けてクラウドサービスを活用した情報の公開を始めたんですよ。情報はできるだけ共有し、よその畑を見て勉強しないと向上しない。いちごは栃木県の顔ですから、生産者皆で質を上げることが大切です」。“いちご王国”の看板を背負う気負いが見えてきます。
イチゴの収獲期は初夏まで続き、夏からは苗づくりに取り組みます。1年を通してせわしなくイチゴづくりに勤しむなか、収獲が終わった初夏に夫婦で旅に出るのが恒例のお楽しみ行事です。「アジアやアメリカなど、海外まで足をのばしています。目いっぱい楽しんで気分転換するのですが、車窓の外にいちご畑を探したり、畑があれば栽培方法や生育具合をのぞいたりと、どこに居ても意識してしまいますね」と笑います。
また、江俣さんのいちご人生に華を添える、うれしいできごともありました。「息子の結婚式で、うちのいちごを使ったスイーツを食事に取り入れたんです。自分のいちごをお披露目して反響を直接見られる貴重な機会でした」。スイーツは大好評。親株からたくさんの小株が出る様子から子孫繁栄の象徴ともされるいちごは、晴れの日にぴったりの食材でした。子息の巣立ちのよろこびに加え、今までにないよろこびを感じる経験でした。
今後の課題はゆとりのあるいちご作りだという江俣さん。「いつまでも若い頃のように根を詰めた作業はできません。私は一生いちごをつくっていきたいから、これからは経験を生かしながら、少し力を抜ける栽培の道を追及したいと思っています」。そうすれば、県内の生産者も皆ずっといちごがつくれるでしょうと笑顔を見せる江俣さん。県の将来に夢を描きながら、生涯現役を目指します。
江俣 伸一
えまた しんいち
鹿沼市生まれ。父の代から始めたいちご畑で、妻の敦子さんとともに日々いちごの生産に勤しむ。現在は、ベテランの技を生産に生かすだけでなく、情報の共有や若手生産者の相談にのるなど、栃木県のいちごブランド力を高める取り組みにも力を入れる。仕事の合間に出かける神社仏閣めぐりや、毎年収穫後の旅行が楽しみ。
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